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  • キャンパー井上

後退する応援と後退する士気。


クライミング仲間の中で一番古くからの付き合い。

チコフさんとたけちゃんとの三人で高知に向かった。

二人の触りたい課題。

たけちゃんは流れ星希望。

チコフさんはなかったのでクレイジーをすすめることにした。

二人の担当はその二つ。

僕の今回の目標は『Blue Heaven』。

グレード感は全くわからないが、触ってみたくて仕方なかった。

いつも通り出発は夜中。

どうしても眠くなり、チコフさんと運転を変わりつつ向かった。

たけちゃんは多分寝ていた。

まず取りついたのは、流れ星。

二人の応援をしつつ、虎視眈々と右ラインを狙った。

しかし前回と同じく、全く力が入らない。

結局前の高度も出ず敗退。

二人とも右はあっさり取った。

そのあとの左取りは、チコフさんは苦手そうだったが、たけちゃんは止めてきた。

たけちゃんが言い放った。

ここで果てていい?

今回の流れ星担当の為、かなり気合が入っていたのだろう。

どんどん時間が経つにつれ、顕著に指皮が消耗してゆく。

どんどん時間が経つにつれ、日向が押し寄せてくる。

僕たちの応援も日陰を求め、どんどん後ろに下がってゆく。

計6回ほど飛んでいた。

だが結局ランジは止まらなかった。

指の痛さで敗退フィニッシュ。

たけちゃんの次回の宿題に。

お次は『Crazy for you』初段。

チコフさんに言っていたのは、一撃しか許されませんということ。

絶対に落ちられないクライミングをしてくださいとプレッシャーをかけた。

絶対に実力的には登れることはわかっていた。

だがチコフさんがジムでたまに見せる激しめの落ち方をすれば大怪我は免れない。

スポットに全集中した。

マットは幸いに多めだったので、地ジャン後すべてのマットを上に挙げて対応した。

一度激しい落ち方をしたが、そのおかげでうまくマットに誘導できた。

ただそれでチコフさんの心は折れてしまった。

もういいかな。

という言葉にそれは如実に現れていた。

だが、もう一回だけやりましょうと背中を押した。

軽い言葉ではなく、自分のスポットに絶対の自信があったからだ。

そして何よりもどうしても落としてほしかった。

ラストトライ。

気づけばチコフさんは岩の上にいた。

最後は記憶がなかった模様。

二人のいいクライミングが見れた。

たけちゃんは宣言通り、使い果たしたらしく、豪勢に壮大な岩の下で目を閉じていた。

そして地味に狙っていた『一閃』三段。

足もまっすぐ直線状に挙げると発射でき、初手も叩けた。

左奥のクラック部分に指がかかれば、少し希望が持てそう。

そして『冒涜の虹』初段。

チコフさんとかなり撃ったが敗退。

下部の安定感は出ていたので、次回のお楽しみ。

そして最後に向かったのは八流。

僕の触りたかった青の天国。

長めのアプローチを抜けると、最高のロケーションが待っていた。

干潮でないと撃てないとあったが、波が穏やかなら撃てそうだ。

というか思っている以上の海の浅さ。

逆に怖い。

一撃しか許されない系。

という心持ちで臨んだが、結果初手取りの地ジャンからよくわからず落ちた。

速攻靴が濡れてしまったので、気にする事なく撃つことにした。

初手が止まり二手目三手目とがガバが続く。

そのガバを何ともなく保持しながらも、いつにない心臓の鼓動の速さを落ち着けようと必死だった。

気にしないように心がけても、ノーマットの緊張感。

しかも瀬の中は、丸い岩がたくさんあってよくわからない。

明らかにそのストレスが鼓動を早め、スタミナの消費にプレッシャーをかけてくる。

無様な登りで上部に差し掛かったが、上部のホールドがパラパラと大きくかけた。

それで完全に心が折れ、降りることにした。

前腕の限界もとうに超えていたため、なるべくまっすぐにして飛んだ。

浅すぎた海と底の石で、左踵と尻を強打した。

明らかに重症だったが、興奮とアドレナリンで痛みがあまりなかった。

その間に落とすしかないと、少しの感覚だけ空けて撃った。

もう二度は許されない。

ゆっくり着実にではない。

早めに行くべきとの判断でガシガシ登った。

休憩もしなかったため、上部で前腕が終わりを迎えそうになった。

嫌だ。

死にたくない。

そう思って目が覚めると岩の上に立っていた。

決して難しい課題ではないかもしれない。

けどまぎれもなくこのクライミングは、僕の心にずっと残るものとなった。


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