快適に目覚める。
僕は簡易ベッドをレンタルしなかった。
落ち親しんだマット達の上でゆっくり起き上がった。
管理棟でゆっくり過ごす。
次々に皆合流した。
ここではやんやんさんが盛大にパンを焦がしたこと。
匂いで気づけよと手塚さんが言ったこと。
そうですよね。
と言いつつ全く僕も匂いに気づかなかったこと。
その一連のやり取りの印象しか朝はなかった。
まず向かったのは『クロール』初段。
こちらはあっさりやんやんさんも池さんもゲット。
やんやんさんはマット擦りだったが二撃。
登りなおすと言って、次のトライは盛大にマットを蹴り上げ爆笑をかっさらった。
いつものコースで『グリム』二段。
前回の宿題。
しっかりと指皮もあり、上部もムーヴを丁寧に作って無事ゲット。
ここで会った恐ろしく強い爽やかお兄さんは五段クライマーだった。
やはり超人というものは実在するようだ。
そしてこのエリア最後は『ドラゴンへの道』二段。
前の日簡単と聞いていたので登る気満々だった。
怖がりながらも何度かランジの部分を繰り返し反復した。
結局全員その一手を止める事は出来なかった。
結果遠すぎて全く届かなかった。
一生やらないリストに入れる事にした。
自分ではリーチもある方だし、デッド力もある方だと思っていた。
リーチなんて一つの言い訳でしかない。
いくらでもカバーできる要素がある。
リーチ足りないという前にデッド力、張力、踏み込み、体の連動。
それが能力値的に全て最大になっていないのならリーチなんて言い訳にならない。
登れない要因なんでたった一つ。
弱いから。
次回はドラゴンになる。
場所を移して『塗仏』二段。
ここまでみんな登っているように書いたが、手塚さんだけは本当に差し支えないよう登っていなかった。
全てはこの塗仏の為。
もう塗り絵の下書きは終わっている。
あとは色を入れるだけだった。
僕は二日後の岩がちらついていた。
無ければ果てるまで撃ったかもしれないが、結果ほとんど触ることはなかった。
エリアでは美しい笛の音が流れていた。
倉上けいたさんがおられ、尺八を吹いていたらしい。
初め全くわからなかった癖に、倉上さんですよね。
とさも分かったかのように尋ねた自分のメンタルに驚く。
初日のムーヴに、少しずつみんな修正を加えていく。
僕は、倉上さんグループにいた黒髪の綺麗なお姉さんを見たり、みんなを応援したりしていた。
結果、まず手塚さんが塗り切った。 核心までは完全に自動化。 核心止めたトライで登り切った。 塗仏以外封じてきたので、結果を出してほっとしているように見えた。 最高のトライだった。 そしてやんやんさんも参戦して核心の練習。 空けては撃つ空けて撃つを繰り返していた池さん。 もうスタミナも切れてきたところに見えた。 みんなに鼓舞され、最後にしますのトライ。 まさかの決めてきた。 気迫のトライだった。
いつかこの岩の上に立ちたい。 心からそう思った日だった。