地獄のような経験を済ませた後は、中野のネットカフェに泊まった。
着替えを全て濡らされてしまった為、東京の街を短パンでうろうろした。
東京の夜は寒かった。
短パンの僕を見る人の視線も冷たかった。
行ったこともないのに、一人で回らない寿司屋へ。
立ち食い寿司も初体験の中、お作法もわからず、周りの人のムーヴを盗み見ながら注文した。
今日は散々だったなと思い返しながら眠りにつこうとした。
隣の部屋に人がきた。
怪獣かと思うほどのいびきだった。
結局ほぼ寝ることができず朝になった。
今日も予定がある。
昨日にマットを借りた先輩と天王岩へ向かった。
先輩より30分早く着くつもりが、電車に乗り間違いまくり、30分先輩より遅く着いた。
昨日からここまで地獄のフルコース。
もう東京嫌い。
佐々木先輩は、知り合いのクライマーでもトップクラスに強い。
大学時代からずっとクライミングをしている。
以前御手洗を案内した際は『岩魚』三段を瞬殺した。
成長したと胸を張って言いたかったが、手術をしているので以前より弱いですと保険をかけた。
まずは『般若』初段。
佐々木さんに初手が悪いと聞いた。
ワントライ目。
確かに悪い。
僕のトライを見た後、佐々木さんは言った。
ちょっと本気を使うわ。
そう言ったトライであっさり初手を止めてそのまま登った。
一流のクライマーは本気の出し入れが自由自在なのだろうか。
僕は何度か初手が止まったがその後の寄せの方が嫌いで敗退。
その後に『ウラヌス』二段。
これが今回一番触りたかった。
なんとなく取りつくと感触が良かった。
核心と思われていた部分は、あっさり止まった。
終わったと思いきや、後からマントルが悪いことに気づく。
それでもしっかりばらして二人で落とした。
以前佐々木さんと来てビショビショの中ド敗退を決めた課題だったので、本当に嬉しかった。
そして地味に手術後、初の二段だった。
そのあと佐々木さんは『冥王』三段も終わらせて15:00頃二人で帰った。
東京での核心は電車でのマットをどれだけ申し訳なさそうに乗り切るか。
本当に色々あった一人旅だったけど、収穫もあった。
終わり良ければ総て良し。
次は徳を積んで戻ってこよう。