今回のブログは、かなり長くなることを覚悟して頂きたい。
ここまでクライミングに熱中しているにもかかわらず、登っている夢は意外と見ない。
けれどこの日は夢を見た。
数年前、垂れ流しで見ていたYou tubeの動画で脳裏に焼き付いていた課題だった。
昔過ぎて、そのことすら忘れていたが、夢で思い出した。
どこの岩場なのか全く見当もつかないし、調べる手立てもない。
山のボルダーで、背景に広大な天空の風景と、ランジ一発の課題だったことだけは覚えている。
雑な絵を描いて、名探偵石田に依頼をした。
どこの岩場かわかったりする?
返事は次の日返ってきた。
これ東北じゃない?
正解だった。
数年前に見た動画だった。
この絵だけで探し出してきた探偵の有能さは置いておいて。
今回のブログはここから始まる。
僕は経理の仕事をしている。
普段はない東京出張が決まった。
ワンチャン向こうの岩を登れるかもしれない。
水、木だったので、ここぞとばかりに金曜に有給を入れた。
木曜の定時が終わり、大阪へ帰る課長を見送ってから、東京在住の先輩クライマーと会ってマットを借りた。
東京でテンション高めの僕に、若干引いていた。
そのまま秋葉原パンプへ。
何気に東京のジムは初めてだった。
店員さんより、御岳は台風の被害で橋が落ち、課題がかなり限定されていることを知った。
大阪で一緒に登っていたまさやと、エンクラで閉店間際まで過ごした。
四階まであり、かなりの人数が登っていた。
特に最上階は、野外になっており、染みだしなどで外岩のような楽しみ方ができた。
しっかり登ってからレンタカーを借りて、東北に出発した。
四時間半の旅。
途中で力尽きて、SAエリアで仮眠を取った。
二時間ほど寝るつもりが、4時間ほど寝てしまう。
到着したのは9:20。
行きの社内からも紅葉の道が続き、テンションは最高潮だった。
着いてからの天気も良好。
登山道も、浮かれながら軽快に登っていた。
日本百名山。
途中の見栄えのする白糸の滝。
硫黄臭のする登山道をひたすら歩く。
途中の激臭の場所もあり、明らかに有害な量が出ている。
看板の文言も、警告というより脅し。
風もかなり強く、マットで煽られ、立っているのもやっと状態。
それでも天気は良く、テンションも相まって足取りは軽快だった。
クライマーは基本的に登ってしまう傾向があるのか、何度か道を外れて迷った。
一時間ほど登っただろうか。
岩群が見えた。
岩の形状は大体頭に入っていたので、次々に課題が見つかっていく。
触りたい岩はたくさんあるが、とりあえず今回のメインを探した。
一番の頂上付近に、ボスのように君臨している岩があった。
ハイボルも見慣れたもので、そこまで巨岩とは感じなかった。
『底無』一級。
夢にまで見た憧れの岩だ。
早速アップを始める。
岩質も嫌いな感じではない。
痛いけど持てる。
そんな感じ。
しかし風がとてつもなく強くなってきた。
寒いを通り越して指がかじかむ。
空を見上げても、雲がタイムラプスの動画のようなスピードで流れている。
雲も出てきて、一気に天気も悪くなった。
今回も目的は登る事と、最高の景色の中でのクライミング写真を撮る事。
少し待って、風がやむ事と天気の回復を待った。
ポツリ、ポツリ。
全てが終わる音がした。
そこからは地獄。
暗雲が経ち込め、雨脚は強くなる一方。
僕は底無の絶望感のまま、底無に背を向けて下山した。
結局憧れの岩には二トライしかさせてもらえなかった。
台風で東北が大変な時期に遊びに来たことなのか。
仕事に来たくせに遊びにきたことなのか。
ツイてなさ過ぎただけなのか。
それとも何か憑いているのだろうか。
単純に日頃の行いが悪すぎるのか。
ご当地の有名な温泉も全て露天風呂の為、雨の中入る気分になれず。
いやがらせのように、帰りの高速では晴天が広がる始末。
あえて文章におこす。
往復9時間、往復登山2時間、レンタカー・高速代諸々2万以上かけて。
僕は。
山の新鮮な有毒ガスを吸いに行ったのだ。