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  • キャンパー井上

魂のしゃくり。


やばいやばいやばい。

早く寝ないと。

夜中にただ一人焦っている男がいた。

僕は寝る前に、二人に忠告をしていた。

僕はいびきが五月蠅いということを。

それに加え、たちの悪いことに、寝つきの良さにも定評がある。

バヤシさんはほぼ同刻に落ちたのでよかったが、オーガさんは寝遅れた。

スースーという可愛い寝息から始まった。

朝、オーガさんは語った。

その寝息は、瞬く間に恐竜の鳴き声の様に変わったと。

快眠の二人と、寝不足のオーガさんとで昨日の晩御飯の残りを朝食にした。

出発は7時前。

ローソンで買い出しをし、大山岬に向かった。

今回の目的の『Crazy for You』初段『八月のハードプレイ』初段。

なんとなく日陰のクレイジーから取りついた。

僕が切り込む。

何度か地ジャンを臆して取り損ない、派手に落ちた。

落ちることで、恐怖にも慣れた。

取れたトライで、そのまま一撃。

ポイントは、ガッツリのオブザベと、登っている時は下を決して見ないこと。

緊張の糸が一気に緩み、振り返れば一面の海。

下にはガッツポーズの二人。

止めていた息をふぅーと吐いた。

ハイボルを登った後のこの昂揚感。

久しぶりだ。

僕が登ったのが大きかったかもしれない。

二人も無事サクッと完登。

自分が登った時よりも緊張した。

ここまで本気のスポットをすることも珍しい。

そして第二回戦のハードプレイ。

バヤシさんは一撃。

いいイメージをもらって僕も完。

オーガさんは、もういいかなと言い始めていたが、二人で背中を押しそのまま完。

無事完登。

登ったバヤシさんが上から磨いてくれるとの事で、下からブラシをオーガさんが投げた。

そのブラシは雲一つない青空に美しい弧を描いて、深い水溜りに落下した。

オーガさんのコントロールの無さ。

明後日の方向に飛んでいくブラシ。

リップからそれを見ているバヤシさん。

そのコントラストに、今日一番笑った。

ここまでが、二時間ほどの出来事。

いつになく予定通りサクッと終わったので、欲張って『冒涜の虹』初段を触り始めた。

同じ勢いで取りついてみたが、こちらはムーヴがわからない。

三人で撃ちまくり、何とか形が見えてきたが核心がなかなかのメンタルもの。

トポにも魂の一手と書いてある。

何とかスタティックに出したい。

二手目にヒールを、少し次回は工夫してみることにする。

結局これを登れたのはバヤシさんだけ。

しっかりレストを入れ、集中トライ。

魂の一手と思われる手は無言で取り、そこから右手をしゃくる時に吠えまくって登った。

僕たちはこれを魂のしゃくりと呼んだ(笑)

僕とオーガさんは、結局そこに行けずに終了。

流石に超看板課題。

次回の宿題があるのも良い。

冒涜岩を後にして、すぐ上にある峠そばのお店に行った。

普通に猫も来店してくる自由度の高さと、店のおばちゃん、客のおばちゃんもフレンドリーでいい感じも店だった。

腹ごしらえを済ませ、お次は前回狩り逃した課題。

チョークが付いていたので、登られているかもしれないが、三人で初登争い。

軍配があがったのはオーガさん。

続いて僕らも完登。

『季節外れの入道雲』二級の下トラバースからの直登ライン。

一級ぐらいかなと三人で話した。

波も迫ってきていたが、裏側の『キューピーマントル』一級。

久々に変形マントルをかまして無事完登。

女子高生の様に三人でキャッキャと楽しんだ。

そしてツアー最後の締めは『分厚いラブソング』初段。

最後の締めにはメンタルの入り過ぎる課題だったが、収穫はあった。

この課題は、バラシができるということ。

そしてニーバーで右手寄せができるということ。

こうして僕達は大山岬を後にした。

晩御飯の定食屋も大正解だった。

睡魔との戦いは、淡路でバヤシさんが買ってくれた【アワライズ】で乗り切った。

不眠不休で阿波踊りをし続ける為だけに作られた超人薬で本当に助かった。

それにしても、黒潮はメンタルのいる課題が多い。

というかほとんどがハイボル。

その贅沢さとロケーション。

完全にもうその魅力に憑りつかれている。


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