- キャンパー井上
密林の鼓動。
以前はたやんと一緒に触った課題があった。
格好いいラインだな。
初めての印象はその程度だった。
触ってみると手もかなり良く、バラせないところはなかった。
その日は繋げられなかったが、何より課題名とロケーション、ラインに惚れた。
三重某所『ジャングルビート』二段。
この日も前日も雨だった。
岩に行く人はおそらくいない。
欲望を抑えるには理性がいる。
この時の欲望はとても一人で抑えられるものではなかった。
夜中の3:00に出発した。
もちろん雨は降っている。
濡れていることは明白だった。
ホールドにチョークを載せる意味もなかった。
マントルはタオルで拭く意味もなかった。
滝だった。
スポットもいなかった。
マットもなかった。
死にたくない。
その一心でマントルを返した。
お買い得の二段。
それは間違いない。
けどこのコンディションでこの課題を撃つ人間は後にも先にもいない。
4/1 僕は初めて二段を落とした。
