おぞましい光景。
買ったのに怪我をしたため履けていないシューズがあった。
紫の浅草。
これは使える。
緑の浅草の印象が根付いてしまっているのでカモフラージュに使える。
ピンク色の靴下も購入していた。
完璧すぎる下準備。
三人は奥のルーフでセッション中だった。
いきなり行っては怪しまれる。
三人に見える範囲で近くの壁でアップした。
一本目の課題。
緩傾斜の二級。
二級でアップする女子を僕はいまだかつて見たことがない。
意地だけで一撃してやった。
え、つよっ。
チコフさんの声が聞こえた。

悦楽。
今まで感じたことのない圧倒的な悦。
その後都合よく隣の壁に来てくれた三人と同じ課題を撃った。
三人が何度かチャレンジしてくれたので登り方がわかってフラッシュできた。
次々と皆登った。
もともとその壁で打ち込んでおられた男性にとってはとんだ事故だったかもしれない。
三人は僕だと全く気付かず、別の所に移動してしまった。
もう満足した。
どう正体をあかそうか。
全力でチコフさんに目を合わせに行った。
しかしどうやっても目が合わない。
キャン子『なんで気づいてくれないんですか!!』
男声で発声した。
『!!!!!!』
『え!!気持ち悪っっ!!!!』
脳の処理が追い付いていない感じリアクションだった。

見たことない女がまっすぐ目を合わせて男声で叫ぶ姿。
チコフさんが今後見る悪夢にリストアップされたことだろう。